易の処世法  損卦~井卦

 

 さて解説の形式は以下のようになってます。
  ○卦名と意味するもの
  ○卦の一般的な解説
  ○爻の意味(どれも6つあります。それぞれ身分を表したり、物事の進展の仕方を表します)の説明になります
  ○僕の注釈

山沢損   損失.他人に与える

 損は損失、減らすことを言うが、自らを減らして他人 に与えることを象徴とします。自己犠牲であり、下から上への奉仕です。目先の利益を捨てて、未来を勝ち取ることこそ 重要です。

  1. 今、行ってることを止め、急いで急用を行えば災いはない。他者と心を一つにすることができ る。
  2. 慎重であれば吉。出て行くのは凶。減らさず増すことを考えるべきである。
  3. 3人で行けばお互い疑い合い、一人居なくなるだろう。一人で行けば協力してくれる人が現れ る。
  4. 病気がなくなり、喜びがくる。災いはない。
  5. 努力が認められ、利益をもたらす人物が現れる。これはどんなに正確な占いで占っても同じ結 果が出るくらい確かなことである。大吉。
  6. 損することなく、他人に益を与えることができる。災いはない。進んで行えば、人望が得られ 社会のために尽くすことができるだろう。

 

 

 

 

 

 


 これは、ボランティアの卦とも言え、自らを犠牲にす ることで、他人を助けると言うものです。マリア・テレサのように一生を他者に捧げることで、世界的に認められる (益)ようになります。損の裏には益があり、決して悪いことではありません。

風雷益   増 える・好機到来

 益とは増えるという卦で、損とは逆に上が減らして下 を増すというものです。この道が行われると上下共に大いに喜びがあります。そう言う意味で好機が到来しており、何事 も順調にいきます。過ちがあれば直ちに改めるのがよいでしょう。

  1. 大仕事を行うのに良い。大吉。下の者でも遠慮することはない。
  2. 進んで助力が得られる。どんなに当たる占いで占っても凶兆は見あたらない。最初の方針を貫 けば吉。力ある人は、その力を十分に発揮すべき時である。
  3. 好機到来。悪いことが起こってもうまく対処できるだろう。誠をもって中道を守れば、君主に 信任される。
  4. 中道を進み、上司に告げて従う。信頼を受けて国都を移転するような大事業をも遂行できる。
  5. 誠があって、味方する人は占うまでもなく大吉。志は大いにおこなわれる。
  6. 下に恵む気持ちがない。外より攻撃される。原則がないので凶。

 

 

 

 

 

 

 益とは政治や会社に於いて、民や従業員に大いに利益 を与えるということです。とある会社では社長がポルシェを買うために従業員の残業代をカットしたということがあった と聞きました。六爻に当たり凶です。これでは、社員は上に付いていかないでしょう。会社も乗っ取られる可能性があり ます。そうならないように、下を益するのが良いとこの卦では説きます。

沢天夬   決 断・決行

 夬とは決断であり、切り開く・決行するを意味しま す。小人が上に居て、これを切ろうとする姿で、危険は伴う。自分の足場を固めてから決行すればよいですが、暴力を 行ってはなりません。穏便に、しかし粛々と事をおこなうことです。

  1. 前足は勇壮だが、勝算がないので前進すること危うく、失敗する。
  2. 恐れて叫ぶ。夜、近所で乱闘があるが巻き込まれることはない。心配不要。
  3. 顔が勇壮だが凶。君子であれば決行しても災いはない。一人で行って雨に濡れるだけだ。
  4. 尻の皮がすりむけて歩くのに苦労する。羊たちを引っ張っていけば問題はないのだが、他人の 親切な言葉を信じないのが残念だ。
  5. ひゆの草を抜き取る。中道を守れば災いはない。
  6. 叫んでも無駄だ。余命はなく、結局は凶。

 

 

 

 

 

 決断を行うにはそれなりのリスクがあります。それ が、上位者を告発するような叫びであれば報復を覚悟するしかありません。それでも告発するのがこの卦です。このよう な時は爻にあるように「君子」が「中道」を守っていれば大きな問題ありません。勇敢なだけでは返り討ち、失敗に終わ るでしょう。

天風姤   出 会い

 出会い、未知との遭遇をいうもので、男女の出会いもあります。ただし、遭うということは素晴らしいことです が、「女を取るに用いることなかれ」とあり、女性が強すぎる形で結婚は勧められないという注意もあります。

  1. 金属の杭にがっしりと繋ぎ止められる。慎重であれば吉。進んでしまうなら、痩せたブタがむ やみに動き回るようなもので、凶。
  2. 包みに魚がある。災いはないが客に出す物ではない。
  3. 尻の皮が擦り剥け歩くのに苦労する。危ういが大きな災いはない。
  4. 包みに魚がない。凶を起こす。君子に取っては民より遠ざかってしまう。
  5. 柳の籠に瓜を入れる。輝かしい物を内に秘めて、外に出すことなければ天寵を得る。それは、 天命を忘れなかったためである。
  6. 角を付き合い、高慢である。行き詰まってしまうが災いはない。

 

 

 

 

 

 

 出会いと言っても、意図した出会いではなく、思いが けずの出会いです。それは人と人だけでなく、人と物や物同士の出会いもあります。人知を超えた大きな力が働いている ので、慎重に取り組むよう勧めています。いわばシンクロニシティかもしれません。


沢地萃   繁 栄・集まる

 萃は草が集まって生えていることで、人や物が集まる という意味です。昔から「鯉、竜門に登るの象」と言われ入試や就職などの人事に良い卦です。ただし、これは天や先祖 のお陰であり、それに感謝することを忘れ自分を過信することを諫めます。また、人が集まれば変事ありと説き、君子は それに備えるようにと説きます。

  1. 誠があってもまとまらず、乱れては集まる。もし叫べば微笑み返す友を得る。進んで事を行っ ても災いはないだろう。
  2. 気を引いてみるのは吉。災いはない。誠さえあれば礼儀は簡素な方がよい。
  3. 人が集まるが、不平が多くてなにごとも上手くいかない。しかし、前進すれば災いはない。少 し吝。
  4. 不相応の地位にいるが、慎重であれば大吉。災いはない。
  5. 人々が集まって適切な地位に付く。まだ信用されていないが、長く慎重であれば後悔はするこ とはない。
  6. 孤立する。悲しんだり恨んだりして涙を流すも災いはない。

 

 

 

 

 

 

 万事好調の卦ですが、突発事に注意とあります。人が 集まると中にはいろんな人が居て、思いがけない事が起きるということです。

地風升   伸 び栄える

 升とは登り進むことであり、木の芽が土の中から成長 していく姿を表しています。何事も順調ですが、このときの心構えとして時を得ること、謙譲と柔順の徳を備えること、 後援者を得ることを挙げています。なお、南に行けば吉といいます。

  1. 逞しく登っていく。大吉。上と志を合わせて進む。
  2. 誠さえあれば礼は簡素であっても問題ない。災いなし。
  3. 都の廃墟に登る。疑うことはない。
  4. 真心を込めて事を行い、その結果が出る。吉で災いはない。
  5. 慎重であれば吉。階段を登るように順を追っていけば、大いに志を得る。
  6. 闇雲に登ってしまう。危険なので、たえず慎重であるべし。

 

 

 

 

 

 この卦は何事も伸び栄えるというめでたい卦です。会 社に例えると売り上げが上がり、支店を増やし、株式市場に上場するようなものです。こういったときに、外部からの後 援者が出てきて助けてくれます。しかし、慢心したときには凶となります。

沢水困   困 難

 困は易の四大難卦(屯、蹇、坎、困)の一つで困苦、 困惑、進退窮まるを表します。この時に何を言っても信じて貰えないでしょう。しかし、この困難の中から乗り越えよう とする所に人間の真価が問われると説きます。大人であれば吉です。

  1. 切り株に腰掛けて尻が痛む、深い谷から3年間抜け出せないという運勢。我慢して時を待て。
  2. 酒食に欠いて苦しむ。自分から行くのは凶。やがて偉い人の来訪を受けて共に大事を行う喜び に恵まれる。
  3. 石に足を取られ、いばらに刺されたりする。帰ってみれば妻に逃げられている。凶。
  4. 助けの手は遅く、当分は金や車などに苦労するだろうが、結局なんとか終わらせることができ る。
  5. 上位者の鼻切り、足切りの刑に苦しむ。しかし、やがて徐々に喜びが訪れ、祭祀をおこなうの もよい。
  6. 蔓草にまといつかれ動きが取れずに苦しむ。動けば後悔有り。しかし、反省して慎重に進めば 吉。

 

 

 

 

 

 


 この困は他の難卦よりも精神的要素が強いと言いま す。圧迫感・恐怖心といったものに苛まれる状態です。この卦にあったら自らを反省し、慎重であるべきです。弁解や泣 き言は無用です。

水風井   良 質の井戸・継続

 井は澄んだ水をたたえる井戸であり、町の中心にある 変わらない物であるから継続を表します。井戸水は尽きることも溢れることも無く、誰でもその恩恵を受けます。また、 時々井戸を浚うように新陳代謝が必要です。この井戸水を汲み上げるのには釣瓶がなくてはなりません。ないと清水は汲 み上げられず腐ってしまうでしょう。
 

  1. 泥が混じって飲まれない古井戸で、鳥さえも近寄らない。人々が寄りつかない。
  2. わずかに湧く水に鮒しかいない。釣瓶も壊れて漏れる。修理が必要。
  3. 井戸を浚ったが、誰も水を飲んでくれない。悩み、苦しむ。王が明らかであれば、一緒に福を 得るだろう。行いを慎むべし。
  4. 井戸を修理してしきがわらを敷き詰める。災いはない。
  5. 井戸は澄んで、その冷たい水は人々に飲まれる。
  6. 井戸を独り占めしようとして覆いを掛けることなかれ。誠があれば大吉。大成する。

 

 

 

 

 

 この井は、人事について語っているとも言われます。 町がどう変わろうとも、環境がどう変わろうとも、変わらず万人を潤す井戸は、大切な知恵を指してもいます。そして、 その井戸は定期的なメンテナンスが必要だと説きます。


随時内容を追加修正します

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