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易の処世法  乾卦〜比卦

 

 さて解説の形式は以下のようになってます。
  ○卦名と意味するもの
  ○卦の一般的な解説
  ○爻の意味(どれも6つあります。それぞれ身分を表したり、物事の進展の仕方を表します)の説明になります
  ○僕の注釈

乾為天   最高の輝く力  発展のセオリー

 乾は陽ですが、陽そのものではなくその勢いを表します。爻ではいかに物事は発展し何に気を付けるべきかを竜に仮託して示しています。

1:地に潜む竜です。力を蓄えつつ時を待ってる時です。素質はありますが、まだ力や信用が
  ないので用いられない状態です。
2:竜が地上に現れます。あなたは周囲より注目されますが、優れた人物(大人)に指導して
  貰ったほうがいいでしょう。
3:評価がだんだん高まって行くと、つい調子に乗って物事をやりすぎてしまうようになります。
  しかし、日々努力し反省していれば勢いがあるため大きな問題にはなりません。
  自らの発言・行動に注意すべき時です。
4:飛躍の時ですがこれでいいのかと迷いが生まれます。力を蓄えつつ、進むべき時に進むのが
  いいです。
5:勢い最高の時でも慢心せず信頼できる優れた人物と相談しながら物事を進めるべきです。
6:ピークは過ぎました。力が大きすぎ、過剰すぎて却って状況が悪くなってしまいます。
  適当なところで妥協し、譲り、手を引きましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 このように端から見ると何の問題もなく発展したように見える物事も内部的にはそう簡単ではないことをこの卦では示してます。さらにこの生みの苦しみについては別に屯卦で語られます。
 なお、占いではこの卦は凡夫の私たちには力が強すぎてどちらかというと凶卦と見る場合が多いです。力が強いと反対の力や歪みが生まれ、それが自らを蝕むことになってしまうせいでしょう。

 

坤為地   消極あるいは柔和な生き方

  坤は陰のシンボルであり、乾とは逆に人について行こう、争わず受け入れようという働きを示します。先頭に立って進むと迷うが、人に付いていけば拠り所を得るという考えで、母・女性・大地などがシンボライズされてます。

1:これから霜が降り、氷の季節がやってくる。こんな時は未来を見据えて準備を怠らないこと。
2:どっしりと落ち着いて四方に広がる大地のような人物は、多少の欠点があっても悪いことは
  起こらない。
3:才能はひらけかすことなく、自分のできることを行い時を待て。もし、力を認められて
  取り立てられたとしても大成功よりも終わりを全うすることを優先しなさい。
4:袋の口をしっかり閉めるように才知をひらけかすことをしなければ、悪いことは起こらないが、
  栄誉もない。
5:(大切な)黄色の袴は大地の色であり同じように下の方にある。人の意見を大地のように
  受け容れて根気よく行うこと。
6:しかし、こういう陰の生き方は行き過ぎると乾卦のような人物と戦うことになってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 乾卦の最後にもあるのですが、易では一般的に「出る杭は打たれるから無闇に前に出るな」と説いています(もちろん、出るときは出ろと他の卦で言ってますし、一生後ろに下がっていた方がいいとも言ってません)。坤卦はこの後ろに下がって生きるときの心構えといった風です。

 

水雷屯   生みの苦しみ

 地面から芽が出る時、物事を始める時、創業の苦労についてです。易の4大難卦の一つですが、将来があっての苦しみですのでそんなに悪いというわけではありません。実際、何事も最初は苦労します。勉強にしろ、スポーツにしろ、事業にしろ、コツが解るまでは苦しいですが解れば簡単になります。

1:行き悩むんでも最初の計画通りコツコツ実行していくこと。人材を適所に配置して、人に謙虚に
  接すれば彼らが助けてくれるだろう。
2:どうすれば良いか悩み色々手を出す一方で、気を引く者も出てくる。しかし、無闇にそれに
  乗らず時を待つこと。そうすれば目的を達することができる。
3:目先の利益に目がくらんで深追いすると行き詰まり危険。
4:悩んでいるなら思い切って試してみるのも悪くない。そのときは自分を過信せず仲間とやるのが
  良い。
5:分が過ぎたことをすると失敗する。
6:自分を見失うと時間も労力も失って引き返せなくなるので注意。

 

 

 

 

 

 

 

 爻にあんまり良いことが書いてないのは、易を作った人々が事業を企てようと失敗した人や道を外した青年、三日坊主の人をたくさん見てきたのかもしれません。どちらにしても最初は何が何だかわからずに迷い、失敗を重ねて結局志を失ってしまいやすいということですね。

 

山水蒙   無知蒙昧を脱する方法

 蒙とは知識が暗い状態であり、誰かに教えてもらうことで「啓蒙」するという、勉学について説くものです。「再占すれば穢れる」という注意もこの卦で出てきます。疑うことは悪いことではありませんが、この場合、自分に都合の良いように物事を見ようとすることを戒めています。見たい物しか見ないのでしたら、質問すること自体意味がありません。答えは最初から決まっているのなら議論など無意味ですし、勉強にもなりません。

1:無知な人間は規律を知りません。学ぶこと自体も知りませんので、厳しく罰を使ってでも教える
  べきです。
2:しかし、突き放すのではなく受容し和やかでもあるべきです。
3:無知な人間の中には良し悪しなど気にも止めず、金に身を売り道を外れたことを平気に行うのが
  います。こういうのはどこに行っても上手くいきません。
4:良い先生に恵まれないと一生無知に苦しむことになります。先生を選ぶことは大切なことです。
5:自分が高い地位に就いていても、先生は先生。丁寧に教えを乞うべきある。
6:厳格すぎると生徒に害になってしまいます。むしろ、外からの害から守るようにしたほうが
  良いです。

 

 

 

 

 

 

 

 この卦は師と弟子という関係で、主に教える立場から説いています。逆に先生を捜してる人はどういう先生が良いかという指針にもなっています。


水天需   決断のタイミング・前進のための待機について

 人生何かを待つことが良くあります。今、転職した方がいいだろうか? 結婚したほうがいいだろうか? 家や株を買った方がいいだろうか? これは決断に迷った時の心構えを説きます。いつ、どういう時に動けば良いかを説くもので、単なる結果待ちとは違います。この卦の各爻は目の前の大川を渡るたとえ話になってます。

1:田舎で時が来るのを待つ。変に動かなければ、トラブルに巻き込まれないで済む。
2:河原で待つ状態。多少非難されても心豊かに中道を行けば最後には吉。
3:水際の泥の中で待つ。足下が悪く流れが速いのに突進するのは危険。タイミングを待った方が
  良い。
4:血の中で待つ。危険な状況だが素直な心で周囲に従えば脱する事が出来る。
5:酒食を備えて(準備をきちんとしておいて)時を待つのが正しい待ちかたである。
6:窮地に陥ったとしても、思いがけないところから助けがある。素直に従えば危険から脱することが
  できる。

 

 

 

 

 

 

  どちらにしても、決断はリスクを覚悟する必要があると暗示してます。また、口を開けて待ってれば天から食べ物が落ちてくるというものではありません。準備をしてその時を待つというものです。

 

天水訟   争い事に巻き込まれたら

 訟とは公の場で理非を争う訴訟のことですが、他人の妨害に対してやむを得ず訴えて争うことになった場合です。勝って叩きつぶそうなどとは思わず、自らも反省し相手と折り合うべきです。良い人の仲裁を持った方がいいです。相手をとことん追いつめようとすると、深みにはまり取り返しの付かない状況になります。

1:(訟とまではいかない小さな)争いは長引かせず適当なところで切り上げるべき。
  うやむやにするということではなく、理と非が明らかになれば十分ということである。
  意地を張っても良いことなどない。
2:争いに負ける。道に反して下の者が上と争うのだから当然。一歩離れて自分の領分を守って
  いれば大したことはない。
3:危うい状態でも今の待遇・処遇に文句を言わず堅持していれば良い。大きな力を授けられた時も、
  勘違いして出過ぎたことをしてはいけない。
4:争いに負ける。じたばたせずに退いて正道を行うべきである。
5:中正を守っているため争いに遭っても問題はない。つまり、裁く側としても片方に偏ることなく
  言い分を聞き偏り無く判断するため問題は起きない。
6:勝った上に、栄誉も付いてくる。しかし、争いで得た栄誉など長続きするものではなく
  あっという間に消え失せてしまう。元々、訟で勝つことなどそんなに尊ばれるものではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 この卦の水地比の背後で繋がってる卦です。水地比の状態であれば天水訟の状態にはなりません。また、次の地水師とも関連しています。どちらにしても冷静になるのが肝心です。争いになるとカッカして自分を見失い意固地になってあとで後悔するようなところまで突っ走ってしまいかねません。
 ところで、2爻の「道に反して」は儒教的な思想ですね。これは別に不正が正を訴えている状態だから敗訴するとみることもできます。

地水師   戦い、あるいは人々を率いる時の心構え

 師とは師匠の意味ではなく、大集団や軍隊のことです。この呼称は現代でも「師団」という言葉で使われ、周の時代の軍制では「師」という単位は2500人を指します。争うという点では天水訟と似てますが、勝つか負けるかというのではなく、いかに部下を率いて戦うか、どう決断するかを説く卦です。裁判では第三者の下で争いますが、戦争では敵とのぶつかり合いになります。
 軍や集団を動かすには何よりも正義に叶っている必要があり、将軍は名と力を兼ね備えた者(丈人)であれば勝つことができるとされます。多くを率いて正義を行うことが出来れば、天下の王者になれるし、戦争によって一時人々を苦しめたとしても彼らは心服し不平を言うことなく従ってくれます。理にかなった正しい目的であれば部下はついてくると卦は説いています。

1:部下を動かすにはまず規律を。例え勝ったとしても規律無き軍隊は只の野盗になってしまい凶。
2:軍の中にあって上下の信望を集める。その声は他国まで聞こえる。
3:今、出陣すると大敗し、部下たちの死骸を車に積み上げて戻ってくることになる。
4:進めないと思ったら退け。勝ち負けに拘って損失を増やすな。次の戦で勝てばよいのだ。
5:出陣すれば勝つことができるが、指揮者には過不足のない人物を選ぶこと。欠格者を指揮者に
  選ぶと正義の戦であっても大敗してしまう。
6:戦が終われば功があった人物をそれなりの地位につけること。しかし、いくら功があったとしても
  小人は責任ある地位につけてはいけない。トラブルの元になる。

 

 

 

 

 

 

 6爻は意味深です。小人とは用語のところで説明したように、利己的な人間で道とか無視してかかる連中です。功績を上げたのも単に報酬が欲しかったり罰せられるのが怖かったというだけで、こういう小人に権力を与えると部下を自分の私兵や奴隷のように扱い、賄賂など平気で取るようになります。小人の周囲の人々は迷惑しますし、あなたの評判も落とします。それどころか、力を付けて刃向かってくるので、結局は改めてこの小人を滅ぼさざるを得なくなってしまうことになります。小人の功は権力などではなく金などで報いた方がいいでしょう。

水地比   和・親しみ合い

 比とは和気あいあいの意味で、人々が親しみ合うことです。どんなことでも親和の心で行えば多くの人が従い、最初はぎくしゃくしていた人もやがては快く協力してくれるようになります。そして身分にかかわらずみんなが協力することで大事業をなす事が出来ます。
 しかし、遅れて来る人間、つまり、みんなが協力するのをみて自分の利になると考えてやって来る小人は良くありません。

1:誠実に人と親しめば悪いことは起きないし、溢れるほどの誠意を示せば良いことがある。
2:心の底から上の人と親しむ。その心を保って永くつき合い続けるのは良いこと。
3:親しもうという心があっても親しめる人間が周りにいないのは不幸。小人とつき合うのは不幸。
4:賢明な上司と親しんで仕えるのは良いことである。
5:公明正大、私心無き心で、去る者は追わずの寛容を持っていれば人々は安心して付いてくる。
  例えば、狩りをするときでも逃げ道を開けておいてそちらから逃げた獲物は追わないようにする
  ような優しい心を持ってつき合う。
6:親しもうとするが手遅れで誰ともつき合えない(いつでも親しめるわけではない)。
  そのため終わりを全うできず後悔することになる。

 

 

 

 

 

 

   天水訟でもありましたが、5爻を見ると人を追いつめるようなことはしてはいけないと易を作った人々は考えているようです。逆に二度と刃向かう気が起きないようにとことんやるほうがいいという考え方もあります。しかし、これでは恐怖政治になってしまいます。いざとなったら、その人々(部下も)はあなたを見限って逃げ出すか、敵に寝返り、あなたを売ってしまいます。どちらがいいかは考えるまでもありません。

 

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