易の処世法 乾卦〜比卦 |
さて解説の形式は以下のようになってます。
乾は陽です が、陽そのものではなくその勢いを表します。爻ではいかに物事は発展し何に気を付けるべきかを竜に仮託して示してい ます。
このように端
から見ると何の問題もなく発展したように見える物事も内部的にはそう簡単ではないことをこの卦では示してます。さら
にこの生みの苦しみについては別に屯卦で語られます。
坤は陰 のシンボルであり、乾とは逆に人について行こう、争わず受け入れようという働きを示します。先頭に立って進むと 迷うが、人に付いていけば拠り所を得るという考えで、母・女性・大地などがシンボライズされてます。
乾卦の最後にもあるのですが、易では一般的に「出る杭は打たれるから無 闇に前に出るな」と説いています(もちろん、出るときは出ろと他の卦で言ってますし、一生後ろに下がっていた方 がいいとも言ってません)。坤卦はこの後ろに下がって生きるときの心構えといった風です。
地面 から芽が出る時、物事を始める時、創業の苦労についてです。易の4大難卦の一つですが、将来があっての苦し みですのでそんなに悪いというわけではありません。実際、何事も最初は苦労します。勉強にしろ、スポーツに しろ、事業にしろ、コツが解るまでは苦しいですが解れば簡単になります。
爻に あんまり良いことが書いてないのは、易を作った人々が事業を企てようと失敗した人や道を外した青年、三日坊 主の人をたくさん見てきたのかもしれません。どちらにしても最初は何が何だかわからずに迷い、失敗を重ねて 結局志を失ってしまいやすいということですね。
蒙と は知識が暗い状態であり、誰かに教えてもらうことで「啓蒙」するという、勉学について説くものです。「再占 すれば穢れる」という注意もこの卦で出てきます。疑うことは悪いことではありませんが、この場合、自分に都 合の良いように物事を見ようとすることを戒めています。見たい物しか見ないのでしたら、質問すること自体意 味がありません。答えは最初から決まっているのなら議論など無意味ですし、勉強にもなりません。
この
卦は師と弟子という関係で、主に教える立場から説いています。逆に先生を捜してる人はどういう先生が良いか
という指針にもなっています。
人生 何かを待つことが良くあります。今、転職した方がいいだろうか? 結婚したほうがいいだろうか? 家や株を 買った方がいいだろうか? これは決断に迷った時の心構えを説きます。いつ、どういう時に動けば良いかを説 くもので、単なる結果待ちとは違います。この卦の各爻は目の前の大川を渡るたとえ話になってます。
どちらにしても、決断はリスクを覚悟する必要があると暗示してます。また、口を開けて待ってれば天から食べ 物が落ちてくるというものではありません。準備をしてその時を待つというものです。
訟とは公 の場で理非を争う訴訟のことですが、他人の妨害に対してやむを得ず訴えて争うことになった場合です。勝って叩き つぶそうなどとは思わず、自らも反省し相手と折り合うべきです。良い人の仲裁を持った方がいいです。相手をとこ とん追いつめようとすると、深みにはまり取り返しの付かない状況になります。
この卦の水地比の背後で繋がってる卦です。水地比の状態であれば天水訟の状態にはな
りません。また、次の地水師とも関連しています。どちらにしても冷静にな
るのが肝心です。争いになるとカッカして自分を見失い意固地になってあとで後悔するようなところまで突っ走って
しまいかねません。
師とは師
匠の意味ではなく、大集団や軍隊のことです。この呼称は現代でも「師団」という言葉で使われ、周の時代の軍制で
は「師」という単位は2500人を指します。争うという点では天水訟と似てますが、勝つか負けるかというのでは
なく、いかに部下を率いて戦うか、どう決断するかを説く卦です。裁判では第三者の下で争いますが、戦争では敵と
のぶつかり合いになります。
6
爻は意味深です。小人とは用語のところで説明したように、利己的な人間で道とか無視してかかる連中です。功績を
上げたのも単に報酬が欲しかったり罰せられるのが怖かったというだけで、こういう小人に権力を与えると部下を自
分の私兵や奴隷のように扱い、賄賂など平気で取るようになります。小人の周囲の人々は迷惑しますし、あなたの評
判も落とします。それどころか、力を付けて刃向かってくるので、結局は改めてこの小人を滅ぼさざるを得なくなっ
てしまうことになります。小人の功は権力などではなく金などで報いた方がいいでしょう。
比とは和
気あいあいの意味で、人々が親しみ合うことです。どんなことでも親和の心で行えば多くの人が従い、最初はぎく
しゃくしていた人もやがては快く協力してくれるようになります。そして身分にかかわらずみんなが協力することで
大事業をなす事が出来ます。
天水訟でもありましたが、5爻を見ると人を追いつめるようなことは
してはいけないと易を作った人々は考えているようです。逆に二度と刃向かう気が起きないようにとことんやるほう
がいいという考え方もあります。しかし、これでは恐怖政治になってしまいます。いざとなったら、その人々(部下
も)はあなたを見限って逃げ出すか、敵に寝返り、あなたを売ってしまいます。どちらがいいかは考えるまでもあり
ません。
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